「言われなくても行きます!」

ふんっ、と身を翻して目の前の扉を開け、通路から事務所の中へと入った。



そのまま事務所の一番奥にあるトイレへ直行する。


「猪飼さん、電池ちょーだい?」

感じのいい明るい声を背中で聞いた。それは紛れもなく岩本さんの声で。


そんなことでまた、私の頭はチンチンに熱を持つ。



トイレ入口の開き戸を開けて、その隙間に体を滑り込ませる時に盗み見れば、管理部のカウンターに組んだ腕を引っ掛けた岩本さんと、

「がんちゃーん、なんか久しぶりねー。元気ぃ?」

嬉しそうに満面の笑みで答える猪飼さんが視界に入る。


パートの猪飼さんは、その膨よかな丸いラインの身体を持ち上げ立ち上がった。



「見ればわかるでしょ? 元気っすよ」

少年のような屈託なく微笑んで、岩本さんは柔らかい口調で返す。



悶々とした気持ちをぐっと堪えて、開き戸をほんの少し乱暴に閉めた。


パシャン、と。開き戸のすりガラスが古臭い音を立てた。