瞬きさえも忘れていた。

だけど、見上げた岩本さんは、どうしてだか寂しげな苦笑を浮かべていて。


チクッ――

いつものとは少し違う痛みに、胸が苦しくなった。



この人、こんな顔もするんだ。


性懲りも無く見とれてしまった。だってすごく……。



岩本さんって、

悔しいけど、本当はこんなこと思いたくないんだけど、



――――すごく綺麗な顔をしている。



そんな私に気づいたのか、岩本さんはハッとたように、その顔から切なさを消した。



いつもの冷たい無表情に戻った彼の口がゆっくりと動く。


「行けば? トイレ。『おっきい方』漏らしたら大惨事じゃない?」

低く冷淡につぶやいて、くくっと小さく笑った。



やっぱりムカつく。ふつふつと沸騰しているみたいに頭の中が熱い。思いっきり殴ってやりたいぐらいだ、バカヤロー。