瞬きさえも忘れていた。

訳がわからず、「何のことですか?」と尋ねれば、

「今みたいな余計なお世話もだけど、いっつもヘラヘラ笑って愛想振り撒いて。そうやって現場のヤツラに好かれたとして、それに何の意味があんの?」

真っ直ぐ私を見据えたまま、岩本さんは言った。


それは至極落ち着いた口調だったけれど、どこか責めるような冷たさがあって。



「気に入られたいとか、好かれたいとか、そんなつもりじゃ……」


「じゃあ、何?」


「母に……」


「母?」


「はい。母にずっと、『キレイでも可愛い訳でもないんだから、いつも笑ってなさい』って言われ続けて来たから」


「ああ……なるほどね」


岩本さんは大袈裟なぐらいに頷いて、ようやくその表情をほんの少しだけ緩めた。



納得してしまうんですね?



『キレイでも可愛い訳でもない』

自覚はしているけど、彼のその残酷なほどの正直さにやっぱり凹む。