「がんちゃん、いつまで一服してんだよ?」


そんな声を耳にし、気になって振り返った。



「あと百本吸うまで」

冗談で返しながら、まだ灰皿の横に居た岩本さんは、身を折って足元に転がっていたグローブを拾い上げた。


それを左手に嵌めながら、キャッチボールをしている人の傍まで移動すると、岩本さんはおもむろにグローブを構える。



パシッと鋭い音が鳴り、誰かが投げたボールが岩本さんのグローブに収まった。

そしてすぐ岩本さんは、一歩前に踏み出して軽く投げ返した。



岩本さんって――

何をやっても様になるから、イヤ。



ずっと眺めていたいのは山々だけども、また吉田さんにイジられるのもちょっと面倒。

後ろ髪を引かれる思いで、その場を後にした。



野球部のマネージャー、断るんじゃなかったな、なんて。

ちょっとだけ後悔した。