瞬きさえも忘れていた。

男性社員が数人、灰皿を囲んで談笑している。若者と中年の割合は、4対6ぐらい。やっぱり中年社員の方が多い。



その中に、岩本さんはいた。


煙草を吸う姿も、極自然でスマート。

気取らない、飾らない、でも格好いい。



無意識的に足を止めて、その素敵さに見入っていた。



「話し掛けて来たら?」

吉田さんに声を掛けられ、ハッと我に返る。


またムチャブリだ。本当にもう、勘弁してください。



「無理です、そんなこと出来ません」

キッパリと言い切った。



「ほんとにいいのー?」

なんて言って、吉田さんは悪戯っぽく笑い、けれどもすぐ前に向き直り、事務所へ向かって再び歩き出した。


「いいんです」

語気を強めて答え、私もその後を追った。