瞬きさえも忘れていた。

何も知らずにこのアパートを選んだ私。

全くの偶然だった。



だけど、その偶然のお陰で岩本さんと再会できた。



運命って言葉――

信じてみようかな……。



不意に顔を上げて私を真っ直ぐ見詰めて、

「どうよ? この仕事」

開き直ったように、でもどこか自嘲気味に笑う岩本さん。



「どうって……。公務員だしいいと思います。相変わらず似合ってますよ、作業着」

冗談っぽく返して、私も笑う。


岩本さんが望んでいる答えかどうか、わからないけど、思ったままを伝えた。



「そっ?」

小首を傾げて、岩本さんは心なしか不安げな面持ちで私を見下げる。


「はい。お仕事頑張ってる岩本さん、素敵です」


どんな岩本さんでも素敵です。大好きです。

胸が苦しいぐらいに愛しています。



「頑張ってないけど。サボってるけど」


「もういいですって、そういうの」


まるであの頃に戻ったみたいで、それが嬉しくて楽しくて。

思わず笑い声が漏れた。


真顔に戻って二人で顔を見合わせ、そしてまた、お互い堪えきれなくなって吹き出して。