瞬きさえも忘れていた。

「あっ……」


思わず間抜けな声が漏れ出た。



「えっ、梨乃?」

彼は驚いたように目を見張る。


そうして私の頭から足元へと視線を走らせ、

「随分……淫らだね」

冗談めかして言って、あの懐かしい意地悪な笑みを浮かべた。



途端、自分がどんな格好をしていたかを思い出して、顔がカーッと熱くなった。


寝起きで髪はぼさぼさ、すっぴん、おまけにパジャマ姿だ。



何年も忘れられずに想い続けてきた人との再会だっていうのに、この醜態。

残念すぎるだろ、私。


穴があったら入りたい。

いや、穴を掘ってでも入りたい。



「そっかぁ、やっぱ梨乃だったかぁ」

どうしてだか岩本さんは、納得したようにそう言った。


「何度か見掛けたことあって、似てるなーって。そら似てるはずだ。本人なんだから」

目の前の彼は、一人で勝手にしゃべくって、クツクツ愉しそうに笑っている。



何も、変わっていない。

心地良い雰囲気も、私を包み込むような温かい眼差しも。


まるで岩本さんの世界だけ時が止まっていたみたいに、何も変わっていない。


髪はちょっと短くなったかな。色も明るくなった?

ワックスか何かで無造作に遊ばせていて、前より若く見えるかも。