月日は瞬く間に流れ、入社して二度目の春を迎えた。



岩本さんとの思い出は、決して色褪せることなどなく……。それどころか、ふとした時、脳裏に蘇る記憶は、その当時よりも鮮やかに感じる。



甲本さんと樽井さんの関係が曖昧なのは相変わらずだった。けれど最近になって、樽井さんの憂いた表情を見掛けなくなった気がする。


樽井さんはいつも、可憐に微笑んでいて。

この幸せに満ちた笑顔を守りたい、と。そんなお節介なことを考えてしまうほど、私は暇人だった。


樽井さんからしたら、有難迷惑な話だろうって自覚はあるんだけど……。



散り急ぐ桜を残念な気持ちで見守り、雨が降り続く薄暗い梅雨を陰鬱な気持ちで過ごし、段々と高くなる太陽を恨めしげに見上げ、そして――


熱い夏がまたやって来た。



じりじりと焦げ付くような日差しに負けないぐらい、心を焦がした昨年の夏。


私の心は、変わらず同じ人を想って憂い、癒され、温まる。



寂しさなんて感じない。ただ、恋しいだけ……。