瞬きさえも忘れていた。

私以上に岩本さんが傷付いているんだと気づいて、抑えきれなくなった激情が溢れ出した。

大慌てで両頬を、両手の平で交互に拭う。



「ごめんなさい。ごめんなさい。私のせいで……ごめんなさい」

嗚咽と共に出るのは、そんな言葉ばかりで、自分のボキャブラリーの乏しさを恨めしく思った。



くしゃっと私の前髪を掴むように撫でて、

「なんで謝るの?」

目の前の愛しい人は優しく笑う。



「謝らなきゃなんないこと、何もしてないでしょ。むしろ、ありがとう」


「え?」


「甲本の言いなりにならないでくれて――――

――――ありがとう」



私の前髪に添えられていた大きな手は、耳の後ろをすうっと優しく伝って、ひらり、静かに離れた。


見上げれば、どんなに眺めていても飽きることない笑顔。それは私の意に反して、滲んで霞んで消えた。



どうしてあなたはいつも――

自分のことよりも『私』なの?