聞こえたはずなのに、岩本さんは立ち止まってくれない。それでも私は、背後から彼の右腕を掴んでその場に引き留めた。
ゆるり、隣に並んだ私を見下げた岩本さんは、怒っているような、でも泣きそうな、何とも表現しがたい複雑な顔をしていた。
だけどそんなの構わず、もう一度問う。
「どこ行くんですか?」
ほんの少しの間をおいてから、ふっと優しく目を細めて微笑んだ岩本さん。
「いいから、梨乃は部屋に戻って」
答えになっていない答えが返ってきた。
「良くないです。どこに行く気ですか? 甲本さんのとこじゃないですよね?」
躍起になって問い詰めれば、岩本さんは、
「甲本のところだとダメなの?」
軽い口調で言って、顔をくしゃりとさせて笑う。
「こんな時にふざけないでください」
滲む視界に必死で堪えながら、震える声で伝えた。
途端、岩本さんは寂しげな苦笑を浮かべた。
「ごめん……。でもふざけてないと、頭おかしくなりそう」
ぽつり、こぼれるように漏れでた呟きに、岩本さんの心情全てが籠められているような気がして。
ゆるり、隣に並んだ私を見下げた岩本さんは、怒っているような、でも泣きそうな、何とも表現しがたい複雑な顔をしていた。
だけどそんなの構わず、もう一度問う。
「どこ行くんですか?」
ほんの少しの間をおいてから、ふっと優しく目を細めて微笑んだ岩本さん。
「いいから、梨乃は部屋に戻って」
答えになっていない答えが返ってきた。
「良くないです。どこに行く気ですか? 甲本さんのとこじゃないですよね?」
躍起になって問い詰めれば、岩本さんは、
「甲本のところだとダメなの?」
軽い口調で言って、顔をくしゃりとさせて笑う。
「こんな時にふざけないでください」
滲む視界に必死で堪えながら、震える声で伝えた。
途端、岩本さんは寂しげな苦笑を浮かべた。
「ごめん……。でもふざけてないと、頭おかしくなりそう」
ぽつり、こぼれるように漏れでた呟きに、岩本さんの心情全てが籠められているような気がして。



