瞬きさえも忘れていた。

「ごめんなさい」

ただ謝ることしかできなくて、岩本さんの視線から逃げるように俯いた。



「謝らなくていいから答えて。無事なの?」


その優しい声音が、鼓膜から私の中に滲み込んで全身に広がる。みるみる熱を取り戻していく身体に、彼への未練を断ち切れずにいることを嫌でも自覚して、胸がじんじん痛んだ。



「甲本に、何もされてない?」

岩本さんは言葉を変えてもう一度問う。


ゆるゆると視線を上げれば、不安げな顔が切なげに私を見下げていた。



コクコクと小さく首を縦に降れば、

「良かった」

と。フッと細い息を短く漏らして、岩本さんは困ったような顔に薄っすら笑みをのせる。



「岩本さん、あのっ……」


「部屋に戻って? 樽井さんが心配してる」


やっぱりちゃんと謝ろうと口を開いたけれど、それは途中で岩本さんの言葉に遮られた。



ニッと、いつもの一瞬だけの笑みを見せ、岩本さんは私と擦れ違った。



「岩本さん! どこ行くんですか?」

振り返って、慌てて彼の後を追った。