瞬きさえも忘れていた。

死にたくなるぐらいの嫌悪と苦痛に悶える思考の中、ふと、樽井さんの言葉が蘇った。


『彼が望んでいることだから』



じゃあ……岩本さんが望むことは?



私はバカだ。

岩本さんのために出来ることなんて、最初から一つも無かった。


岩本さんの『望むこと』を考えるべきだった。そしたら答えは自然に出たのに……。



「やっぱりイヤッ!」

目の前の顔を、右手で目一杯遠くへ押しやって叫んだ。


「こんなの、岩本さんは望んでない! 望まない!」


両肩を掴まれ、無理矢理ベッドに押し付けられたけど、無我夢中で身体を捩って暴れて、そこから逃げ出した。


出口へ向かって全力で走る私に、

「じゃあアイツは、職失うのを望んでるとでも言うのかよ?」

背後から投げられた罵倒に近い問い。



でもそんなの、負け犬の遠吠えにしか聞こえなくて。


わざわざ立ち止まって言い返す理由も価値も今の私には見いだせないから。

振り返ることさえせず、そのまま部屋を後にした。