瞬きさえも忘れていた。

「どうして? 樽井さん、甲本さんのこと好きなんでしょ?」


凄く意地悪な質問だ。でも、言わずにはいられなかった。


これから自分の身に起こるおぞましいことの腹いせに、樽井さんを傷付けてやりたいと本気で思った。



樽井さんはその小さな瞳に、溢れんばかりの雫をたたえて、

「好きだけど……でも、彼が望んでいることだから」

私を真っ直ぐ見詰めたまま答えた。


その声は酷く震えていて、彼女の精一杯が伝わってくる。なのに私の憤りは激しさを増すばかりで。



「望んでるからって……。そんなのおかしくない? 好きな人が自分以外の人抱くんだよ? 樽井さんは平気なの?」


きゅっと下唇を噛み締めた彼女。目を伏せれば、溜りに溜まった哀しみがその頬をつーと伝って落ちた。



「とめてよ。樽井さんがとめてくれたら私、行かない」


責任転嫁もいいところだ。そんなの十分過ぎるほどわかっているのに、誰かのせいにして自分だけを守ろうとしている狡い私。



「鳴瀬さん、ごめんね? ごめん……」

下を向いた樽井さんの目からボタボタと止め処なく雫が落ちる。それは正座している彼女のスカートに沢山の染みを作っていった。