瞬きさえも忘れていた。

二日目の夜、旅館の宴会場で親睦会が開かれた。

親睦会と言っても、ただ飲んで食べてするだけだけど。


夕食を兼ねているから、必然的に全員参加。

パートの奥さまたちと、『ある程度お腹が膨れたら、早々に部屋へ戻ろう』って、予め話し合って決めていた。



長机が二列、ごく一般的な畳の宴会場。

開始当初はきちんと並んで座っていた社員たちも、一時間ぐらいしたらぐちゃぐちゃに入り乱れ、どこに誰が居るのか全く把握できていない状態になった。



だから、

「梨乃ちゃん、お疲れ」

不意に隣に座られ、そして声を掛けられて、『しまった』と思った。


避けようがなかったけど、気が緩んでいたのも確か。



隣に座ったその人は、悔やむ私に構わず話し掛ける。



「あいつ、大変だな? 彼女の束縛激しくて」

言いながら隣の彼が浮かべた薄ら笑いに、吐きそうなほどの嫌悪感を覚えた。