瞬きさえも忘れていた。

「岩本さんと釣り合わなくても、身の程知らずって言われても、私は岩本さんが好きなんです。自分ではどうしようもないぐらい好きなんです」


「だーかーらー? だから何? ブスってほんっと、しつこくてウザいよね。キモいんだけど。

てかさ、まだ気付いてないの? あんたは私の代わりだったんだよ? 達志は身近なところで妥協しただけ。それなのに勘違いしちゃって、ばっかじゃないの? もう痛々しくて見てらんない」


「そんなことない! 私は岩本さんを信じます」


「へぇ……。じゃ、勝手に一人で信じてれば?」



どうしてここまで言われなきゃならないんだろう。

もういっそ、諦めてしまった方が楽なんじゃないかって、自分の弱さに負けそうになる。



「そんなに自信があるなら、」


狡いけど、卑怯だけど。

縋る思いで口にした最後の切り札。



「岩本さんに本当のこと話してください。妊娠は嘘だったって話して」


「話すよ? ほんとに妊娠したらね?」


平然とそう言った彼女は、おどけたように肩をすぼめ、小悪魔的な笑みを見せた。