瞬きさえも忘れていた。

「でも身を引いて当然よね? あんたと達志じゃ、余りにも釣り合わないもの。身の程知らずもいいとこ。だってあんた――

――――ブスじゃない」


彼女は冷ややかに目を細め、けれど口角は微かに上がっている。

その憎しみが籠められた嘲笑に、背筋がゾクリとした。



私はブスじゃない。綺麗じゃないし可愛くもないだけ。

だから、心折れたりなんかしない。陳腐で低俗な中傷なんかに負けない。


自分自身に言い聞かせるように、心の中だけで叫んだ。くじけそうな志気を奮い立たせるために。


だって悔しい。このまま引き下がるなんて、死んでもしたくない。



「だから何なんですか? ブスは岩本さんを好きになっちゃダメなんですか? そんなはずないですよね?」


「ダメでしょお?」


私の主張は鼻で笑われ、すぐさまバッサリ切り捨てられた。



「だって、達志だよ? あんた、自分の顔、ちゃんと鏡で見たことある? そんなんで達志の隣に並んで、よく恥ずかしくないよね? まぁ、図太いあんたは平気かもしんないけど、達志の方が恥ずかしいんじゃない? 達志、可哀想」