瞬きさえも忘れていた。

「いい人ぶってバカみたい」

言って顔を上げた彼女は、嘲笑を浮かべていた。



「偽善者ぶって、綺麗ごとつらつら並べて、気持ち悪いんだけど。吐きそう。

内心では、うちの親がこのまま許さなきゃいいって思ってるくせに。無理矢理にでも中絶させられればいいとか思ってんでしょ?」


「そんなこと……」


「私のこと気遣ってるふりなんかやめてよ。あんたは、達志に嫌われたくないだけじゃない。そんなのバレバレなんだから」


「あなたのことなんか気遣ってない。岩本さんにも嫌われたくない。それは認めます。

でも、お腹の子に罪はないことぐらいわかってます。そうでしょ? だから中絶なんか望んでない!」


「ほらまた本性出た」


そう言って、彼女は満足げに微笑んだ。



「いい人ぶったって無駄なのよ、あんたなんか。だって、性根が腐ってんだから」

くすくすと愉しそうに笑う彼女が、心底憎らしいと思った。