瞬きさえも忘れていた。

「最後……の?」

岩本さんの意志が籠められた一語を、ほとんど無意識的に繰り返した。



「ん、これが最後だから」


わがままなんか、今まで一度も言ったこと無かったくせに。

私のわがままを聞くばっかりで。



「それが……岩本さんの答えなんですね?」

胸の奥につっかえていたものを、言葉と共に吐き出した。



岩本さんは唇をキュッと横に結んで、コクコクと二回、小さく頷いた。

苦しそうに細められた眼差し。その中の漆黒を透明な膜が覆う。



「ごめっ……梨乃……」

震える声で謝る岩本さんに、

「岩本さんは正しいと思います。だから、最後のわがまま聞いてあげます」

ほんのり冗談めかして、けれどはっきり伝えた。



もう、苦しまないで欲しいと切に願う。

岩本さんには、いつも笑っていて欲しいと心から思う。



だから、

「何でも言ってください。最後ぐらい、私がわがまま聞いてあげます」

軽い口調で言って、全力で微笑んだ。


これが私の精一杯の強がりだと、誇示するように見せつけて。