瞬きさえも忘れていた。

それはとても静穏な響きだったけど、籠められた強固な意志が痛いぐらいに伝わってきて、逆らうなんてことできなかった。


手を引かれるままに、力なく歩を進める。



階段を下りた先にある改札口。


岩本さんから自分の鞄を受け取り、中からパスケースを取り出して、自動改札機を抜ける。



岩本さんは窓口の前を通り、少し身を屈めて中の駅員さんを覗き込んだ。


ジーンズのサイドポケットに左手を突っ込んで、

「やっぱり乗らなかった。すみません」

言って、そこから出した切符を差し出し、駅員さんに渡した。



「お待たせ」

と、私の元へ小走りして来た岩本さんは、いつもの調子でニッと一瞬だけ笑って見せた。



「切符あるなら、自動改札通れるのに」

どうしても気になってしまって、思わす指摘すれば、

「そうなの?」

と、照れ臭そうに苦笑した。