瞬きさえも忘れていた。

私のすぐ傍らまで来た岩本さんは、軽く折った膝に両腕を突き立て上体を支える格好で、苦しそうに肩を上下させている。



荒い息づかいの合間に、

「り……のっ……」

また私の名を口にし、そして咽た。



呆然と、そんな彼をただ見上げることしかできなくて、身じろぎもせずにじっと見詰めていた。


しばらくの間、呼吸を鎮めることに精一杯で、岩本さんは黙ったまま切なげな視線だけをこちらに注ぐ。



やがて、薄く開かれた唇の隙間から、弱々しい声が漏れ出た。


「平気か?」



この人は一体何を言っているんだろう……。


余りにも浅はかな問いに一瞬驚愕したけど、でもすぐ、何だか全てがバカバカしく思えて来て、私の口から出たのは小さな笑い声。



「梨乃?」

岩本さんは頭を傾けて俯いている私の顔を覗き込む。その顔は酷く不安げで。