瞬きさえも忘れていた。

「あ、ごめん。その……甲本くんは色々と前科が……」

吉田さんは慌ててそう言い足したけど、全然フォローになっていない。


『前科』って何?



どう答えればいいか全然わからなくて、拠り所を求めるように吉田さんの肩越しに見える樽井さんに視線をやった。


けれど、どうしてだか彼女は、下唇を噛み締め今にも泣き出しそうな顔をしている。



「樽井さん? 大丈夫?」

なんだか心配になって、そっと呼び掛けた。


樽井さんはハッとしたように身体を小さく跳ねさせ、その顔に引きつった笑顔をのせる。



吉田さんは一瞬だけ彼女を振り返って、すぐにまた私の方へ向き直ると、溜息を小さく一つ吐いた。



「あのね、」

吉田さんは重そうに口を開いたところで、自分の腕時計に視線を落とす。


「もう時間ないや。簡単に話すと、甲本くんってね、入社する女の子、ほとんど漏れなく声掛けるんだ。それで……後はわかるでしょ?」

肝心要の部分は私に委ねて、気まずそうに苦笑した。