瞬きさえも忘れていた。

いつものごとく私をからかって、反応を楽しんでいるんだ。



悔しいから、隣の岩本さんをじっと見上げて、

「いらないですか? 愛情……」

わざと切なげな声で聞いてやる。



「いるよ」

そう答えて、優しく目を細めた岩本さん。その顔が不意に近付いてきて……。


ふわっと唇が合わさった。



ほんの少し隙間を作って、「そんなの当たり前でしょ」と続けてすぐ、岩本さんは身を引いた。


そうして、何事もなかったようにベンチにゆったりと背中を預け、意味もなく前方に視線を注いだ。



甘い不意打ちへの驚きと、呆気なく離れてしまった残念さと。不思議なコラボレーションに頭がぼんやりして、ただ、その涼しげな横顔を呆然と眺めていた。



しばらくして、再びこちらに視線を寄越した岩本さん。

また不意打ちを食らって心臓がドクッと跳ねる。身体まで跳ねた気がした。