瞬きさえも忘れていた。

連れて来られたのは、会社の裏にある児童公園。真夏の昼間だからか、誰も居ない。



足を止めることなくそのまま木陰のベンチまで行き、岩本さんはおもむろに腰掛けた。

それに倣って、私も隣に腰掛ける。



私の膝の上のお弁当に視線をやって、

「俺の分は?」

と、岩本さんは悪戯っぽく笑った。ようやくいつもの笑顔を見られて、ホッとする。



「ごめんなさい。明日から作って来ます」


「それ、自分で作るの?」


「いえ、これは……お母さんが作ってくれるんですけど。でも岩本さんの分は私が……」


「えー、俺も『お母さん』が作ったのがいい」

そんなことを言って、意地悪く微笑んだ。



「酷いっ! そりゃあ私が作ったのなんか、味は保証できないけど」


「食べるもんなのに…。味保証しないなら、何保証すんの?」


「あい……じょう(愛情)?」


「そんな保証いいから、味の保証が欲しい」

そう言って、また意地悪な笑みを見せる。