瞬きさえも忘れていた。

そうして、リレーでバトンを受け取る人みたいに左腕をこちらに向かって差し出す。

躊躇いながらもそっとその手を取ったら、ぎゅっと握り返してくれた。



岩本さんは歩き続けながらも隣の私をじっと見る。けれどすぐ、フッと、溜息のような苦笑のような息を小さく漏らして、再び前を向き直った。



「どうして弁当持ってんのに、来るの」

尋ねるというよりは窘めるような口調で言った。



「ごめんなさい」

ボソボソと謝れば、再びこちらを見下げて、

「謝らなくていいから。理由を教えて」

心なしか苛立った口調でもう一度問う。



視線を外して俯き、渋々答えた。

「岩本さんに会いたかったから……です」


さっきより更に小声になってしまったけど、隣にはちゃんと届いたらしく、

「わざわざ会社で会わなくたって、いつでも会えるのに」

今度は随分と優しい声音でそう言ってくれた。