事務所出口横の壁に並んで掛かっている、来客用のヘルメットを一つ、手に取って頭に被った。


サイズが合わなくて大きすぎるそれは、私の視野をかなり狭めてしまう。でも自分専用のなんか持っていないから仕方がない。




迷わず10号機から12号機エリアへ直行した。


工場長は常に工場内をうろうろしていて、どこに居るかなんてわからないから。全体を隈なく歩いて探すしかない。




彼はそこに居た。

12号機横の鉄製階段を上った先に。



背の高い彼の、半分ぐらいの高さがある大きなコイルを、機械にセットしているところだった。



不機嫌そうにも見える真剣な横顔。滴る汗すらもキレイ、と思うほどに完成されたそれ。


首に捲かれたタオルは喉元でキュッと結んで、それだって、どういう訳か凛々しいなんて思う。