…とっさに



嘘をついた。






あたしには、中学の時から付き合っていた人がいた。



あたしの“初めて”を全て奪って行った人が。



好きで好きで



子供なりに真剣に愛してた。



高校一年の時に、彼は両親の離婚のため、母親の実家がある神奈川に戻り働かないといけなくなった。



あたしは



泣いて泣いて



彼を引き止めた。



でもその願いは叶わなくて



彼と一緒に過ごす最後の夜。



“行かないで”と尚も泣いてすがるあたしに



『安もんでごめんな。二年後、絶対迎えに来るから。』



そう言って彼は薬指に指輪をはめてくれた。