あの幼少時代に手にいれられなかったものを再びこの手にしたい、この手に出来ると、そう思っていましたけど、それはもう取り戻せないものだったんです。

いえ、もしかしたら、ゆっくり少しづつなら可能だったかもしれません。

22年間、誰にも愛されなかった心は、22年かければ修復されたのかもしれません。


でもねえ、そんな悠長なこと言ってられなかったんですよ。


鋼鉄の箱の中から解放された時には、もうすでに俺の心は死にかけ寸前だったので、すぐにも乾きを潤したかったし、飢餓から抜け出したかったんです。


でも、出来ませんでした。

ジンちゃんが悪いんじゃありません。

それをたった1人の若干19歳の少年に治せと言っても、無理な話ですから。

ジンちゃんだって、まだ子供なんですから。