【珍獣使い】の憂鬱

それに袖を通して鏡の前に立つと、やはり男ですから、そんなに濃くはないけれど拗ね毛が気になってシェーバーでそれを剃りました。


それから膝下までの白いレースのソックスをはき、メイクボックスを開いて念入りに化粧を施しました。

髪は少し長めのショートカットでしたが、顔の造りが中性的なので、鏡の中の俺は完全に女の子
でした。

ヒールのないリボンのついたフラットシューズをはき、外に出ると5月の風が涼やかに俺の頬を撫ぜ、心が晴れ晴れとしました。



どこに行くつもりも、何か目的があるわけでもなく、ただただ俺は女の子の格好をした『楡川夏』として東京の街を闊歩しました。


30分くらい歩いたでしょうか。