しーくれっとらぶ

トントン―…

その時、部屋のドアがノックされた。


『なに……?』


あたしはドアを開けずにその場で返事をした。


「龍君が来てるよ」


梨華さんの声だった。
ドアの向こうから聞こえた言葉に耳を疑った。


「唯ちゃんに会いたいって」


龍があたしに会いたい……?

あたしに会って何を言うの……?



あぁ―…、

もうマンションに来るなとか……?

言われなくてももう行かないのに…。


それともいい加減ネックレスと指輪を外せかな……。

今ちょうど捨てようとしてたんだけどな…。


何を言われるにしても、また辛い思いするだけだよね…。


だったら会わないほうがまし。
これ以上傷つきたくないや……。


『…帰ってって言って……』

「でも…っ『いいから!……お願い、梨華さん……』


梨華さんはそれ以上何も言わなかった。

そして梨華さんが階段を降りる音が聞こえた。