誰かの匂いが俺の鼻を掠めたかと思うと、俺はその匂いに後ろから包まれた。
「遅くなってごめんね。待っててくれてありがとう」
その声は俺の待っていた…いつも傍で聞いて居た結衣の声。
「遅いんだけど。もう帰ろうかと思ってた」
「ごめん。でも帰らないで居てくれたんでしょ?」
分かっているかのようにいうその言い草が前の結衣とは少し違った。
それだけ、結衣との距離が空いていたということ。
「待ってるって言ったからな。でも、来てくれるとは思って無かった」
本当に結衣が俺のところに来てくれるなんて思って無かった。
振られてもしょうがない事を俺はしてきたんだから。



