「そ。俺が行きたかったんだ。…結衣、と二人で…」 「え?」 最初は自分の耳を疑った。 だけど、新君はさっき“結衣”と呼んだ。 新君が結衣と初めて呼んでくれた。 と言うか、男の子に結衣と呼ばれた事も久々だった。 もう、彼は私を結衣とは呼ばなくなったから。 「ごめん。忘れて良いから」 それだけ言うと、新君は私の前を先に行ってしまった。