いや、叩けなかった。



あたしの手は彼の体を軽くすり抜けたのだ。




「――――――え?」




「ごめん…ごめん……ほんとにごめん」




彼はあたしの頬に手を当て、しばらくの間見つめていた。



「…………どうしたの?翔」



「愛してるよナツ…愛してる…ずっと…ずっと…ずっと…愛してる」



明らかに彼の様子はおかしかった。



頬に当てられた手は氷のように冷たく、彼の顔には血の気がない。




「翔っ?!」



「愛してるよナツ…ずっと」