レインは
幻聴かと思いました

でも確かに
ハンズは言いました

レインは
震える声で話した

いつも
ハンズにした話し


両親のことを
友達のことを
故郷のことを


話しを終えた時
もう
レインには
痛みや恐怖は
ありませんでした

いつもの
穏やかな安らいだ
気持ちが
戻ってきました

レインは
血だらけの手で
ハンズの手を
握りました


ハンズの手は
とても暖かかった
レインはポロポロ
涙を流しました

レインは
小さな声で


お母さん


と言いました
ハンズの手は

大好きな
大好きな
お母さんの
手のように
暖かかったのです

レインは
お母さんに
抱きしめられた
温もりを想い
幼い日々の思い出が
次々と
浮かんでは
消えました

でも
お母さんの
温もりと
笑顔はずっと
消えませんでした


さっきまでの
寒さも
もうレインは
感じませんでした


レインはハンズを
見つめ
言いました



お前の手
暖かいな…
ありがとう
側にいてくれて
大切な
大切な
大切な人



そう言って
レインの手は
ハンズの手から抜け
ぱたりと落ちた


ハンズは
また
同じ言葉を口にした



『お前の両親は?』



でも
レインは
もう何も
話しませんでした



ハンズの瞳から
ポロポロと
涙がこぼれました
どうしてか
わからなかったけれど次々に
涙がこぼれました


そして
穏やかな顔をした
レインを見下ろし

ハンズは



『さようなら』



と言いました