「なぁ、アユ見て」
「なに?スケッチブック?」
彼がニヤニヤしながらページをめくると
大きな画用紙いっぱいに真っ青な海の絵が描かれていた。
「すごい‥、これがハルが描いたの?」
「そうやで、俺まだ世界一綺麗な海って見たことないけどたぶんこんな感じかなって想像してみてん。」
彼の描いたその絵は、吸い込まれそうなくらいのアクアブルーで描かれていて、そのまま水面がゆらゆら動きだしそうなくらいリアルだった。
「すごいよハル!見たことないのにこんなに上手に描けるなんて!」
そうかなと照れて頭をかくハルはとても嬉しそうだった。
「でも世界一綺麗な海ってどこにあるのかな?」
「そうやなーやっぱり外国やろうな。」
見てみたいなとつぶやくとハルが大人になったら一緒に行こうやと言った。
それがとても嬉しくてうんうんと何度も頷いた。
ねぇハル、私たちは小さい頃から数えきれないくらい沢山の約束をしたけど、あの約束だけは果してくれなかったね。
本当はずっと期待してたんだ。
私の手を引いて連れていってくれるって。


