「…そうだよな…
こんなに楽しいもんって他にねぇよな」
理久はつられるように微笑んだ。
どこかに置いてきた感情を全て取り戻した気がした。
この懐かしい感覚と、
ボロボロになるまで使い込まれたボールの感触。
心からサッカーが好きだという
純粋な気持ちを…。
「よーし、
決着つくまでやるぞ!」
理久は再びボールを手に取ると ロングパスをフィールド目掛けて蹴り上げた。
「わぁああー!
マジ〜!」
勢いよく転がっていくボールを目掛け少年達は再び走り出した。
久しぶりだった。
こんなにサッカーが楽しいと感じるのは久しぶりだった。
「お前ら、固まりすぎだって!
もっと散れってば!」
「うぉおお〜!」
我先にとボールに一心不乱に食らいつく少年達は本当に純粋だ。
好きだから、
こんなに一生懸命なんだ。
やっぱり、
俺もサッカーが好きで好きで
たまらないんだ。
「……………寒っ…」
制服姿の女子生徒は河川敷に腰を下ろし、遠くからフィールド上の理久を見つめていた。
春になったばかりの気候はたまに肌寒さを漂わせている。
「……子供相手に本気になっちゃってるよ…」
いつのまにか本気でボールの取り合いをしている理久を眺めながら、彼女は微笑んだ。
「……よかった………」
彼女は楽しそうに笑っている理久をずっといつまでも眺めていた。


