西の空に揺らめく夕陽は、辺り一面をほのかに朱く染め上げ今日一日の終わりを告げようとしている。
理久はサッカーグラウンドがある河川敷で佇んでいた。
今日も意味のない一日が終わろうとしている。
グラウンドでは小学生達がサッカーに夢中になっていた。
静かな河川敷は時折、少年達の声援が響き渡るだけでとても静かなものだった。
「……………」
無邪気にサッカーに勤しむ彼等を眺めていて気持ちがよかった。
自分もそんな頃があったのかもしれない…それさえも忘れていた気がした。
いつからだろうか。
サッカーが楽しくなくなっていったのは…。
理久はぼんやりと考えていた。
「すみませんー!」
遠くから声がした。
声がする方向に目をやると、そこにはサッカーをしていた小学生が立ち尽くしていた。
「すみません〜
ボール、捕って下さいー!」
ふと足元に目をやると、サッカーボールが転がっている。
ボロボロに使い込まれたボールはどこか懐かしさを感じた。
…上手く跳ぶだろうか。
もう半年以上もボールに触っていなかった。
レギュラーから外され、そのまま中等部を卒業し、高等部に入ってからもまだ一度も部活には参加していない。
長い間、サッカーから離れていた理久は自信がなかった。
「すみませーん!」
早くボールをこっちに投げてくれと言わんばかりに少年は理久を急かした。
…わかってるよ、
そう急かすなよ…
理久はそう思いながら意を決してボールを蹴った。
長い空白を埋めるように、空を一直線に横切るとボールは高く長く跳んでいく。
ロングパスが少年に渡ると、グラウンドで歓声が上がった。
「うおおっスゲェー!!」
引き込まれるように少年達は集まると、尊敬の眼差しを理久に向けた。


