「もう、いいの。
高校なんか…
どうでもいいのよ…」
リズの母親は言葉を投げ捨てた。
「…彼女、泣いてました…
ごめんなさいって何回も謝ってました。
彼女は学校に行きたくて、それでもその一歩が出ないから今、苦しんでるんじゃないんですか?」
彼女は今の自分のもどかしさに苦しんでいた。
だから、あんな表情を俺に見せたんだ。
理久は確信していた。
「もういいのよ。
あの子には私達が期待を掛けすぎたの。
私達の理想通りにさせようと、あの子を縛った結果が今のあの子なの…
もう、苦しめないように追い詰めないようにそっとしておくしか方法はないのよ。
だから、もうあの子を追い詰めないで…お願いだから…」
それは今までの過ちを懺悔するかのように吐露した言葉だった。
彼女の母親は感情的になり、その場で泣いていた。
「……何をそんなに怒る、またあおいが泣くだろ…
しょうがない子だね…」
背後から彼女の祖母がふらふらと現れた。
「お義母さん!
外に出たら危ないからやめて下さいと何回言ったらわかるんですか!」
「…あおいがいないから、捜してるだけだよ」
「リズは家にいますよ!」
母親はリズと名乗った途端に、ハッと我に返った。
「…リズ?
そんな子はうちの子にはいないだろ…とにかく、あおいを捜して…」
母親は祖母の手を取るとしっかりと離さないように強く握った。
「……ごめんなさいね…。」
彼女は申し訳なさそうに理久に謝った。


