「熱が高いわね。
しばらくここで休んだ方がいいけど…帰り、連れて帰れる?」
保健医の先生はまじまじと理久を見つめた。
「え? 俺、関係ないんですけど…」
知らねぇし。
「一年生でしょ?
保護者は?」
だから、知らねぇし。
「…仕方ないわね、先生に話を通してくるわ」
保健室に女子生徒と理久だけを残して保健医は姿を消した。
しんと静まり返る空間は何故か落ち着かなかった。
理久はベットに横たわる彼女を徐に眺めた。
「……………。」
始めてまじまじと顔を見たが、 綺麗な寝顔だった。
こんな時に不謹慎だけど見とれてしまった。
白くて透き通るような肌。
触ると崩れてしまうような繊細な身体。
見つめられるときっと見とれてしまうだろう、大きな瞳。
時折、その綺麗な顔が苦しみで小さく歪む。
何がそんなに彼女を苦しめているんだろう。
うなされている時の言葉を思い出した。
『許して…』
彼女の痛みが伝わってくる。
「……………」
理久はいたたまれなくなり、無意識のうちに彼女の頭にそっと手をやった。
触ると壊れてしまう脆い感覚。
優しく頭に触れると、いわたるように理久は彼女の頭を撫でた。
「……大丈夫…だから…
そんなに泣くなよ……」
いつのまにか、彼女の澄んだ肌に無色透明の涙が伝っていた。
「…もう…大丈夫だから……」
根拠のない薄っぺらの言葉。
それでも理久は何度も何度もこう告げていた。


