春になったばかりの外気は思ったより陽射しが強く、制服に張り付く気温は欝陶しさを通り越し不快感さえ感じるほどだ。


翠翔学院大学高等部。


真新しい制服を身に纏った学生達は正装した保護者と列を成すように広大な敷地内に入っていく。


理久はそんな光景をただ教室の窓から見下ろしていた。


今日は高等部の入学式だ。

見慣れた生徒ばかりが大半を締めているせいか、高校に進学したという実感が湧かない。


中等部からそのまま高等部へ上がった理久がそう感じるのも無理はなかった。



「…あー
だりぃ… …」


理久は変わりばえのない生徒の面子にうんざりし、このまま家へ帰ろうかと深く溜め息をついた。



「……………」



どれぐらい時間が経っただろうか。


窓から差し込む陽射しが気持ちよく、つい窓辺で寝てしまっていたことに気づいた。


理久は身体を起こすと時計に目をやる。


入学式はとっくに始まっている。


「…帰ろ…」


おかん怒るだろうな。
いや、怒ってるな。
いつまで経っても来ない息子に。


ま、いっか。