「あれ、陽呂ひとり? 珍しいね」
「あー、美鶴か。……心菜の機嫌が悪いんだよ」
本当は昨日仕上げた資料を置いていくだけのつもりだった俺は、何となく心菜と顔を合わせにくく、データーの打ち込み処理までしてしまっていた。
そこにやって来た美鶴は、分厚い本を開きながら失笑した。
「陽呂、会う度に言ってない?
姉ちゃんに振り回され過ぎだよ」
振り回され過ぎ、か。
そんな事はないつもりなんだけどなぁ。
「う~ん。何で怒ってんだろ」
ボソッと呟いた俺の言葉に
「また、いつものじゃない?」
そう困った顔を見せる美鶴。
「……多分、そうだろなぁー」
そして俺も困った表情をしてしまう。
“いつもの”ってのは、愛未さんと沙耶の事。
絶対、あの2人に何か吹き込まれると心菜の機嫌は悪くなる。
やっぱ何吹き込こまれたんだろな。

