「心菜さん、ちょっとトイレまで来て下さい」
心菜の耳元で囁き、先に席を立った。
壁に背中をあずけ、トイレの前で心菜を待っていた。
のに!
そこに現れたのは、何故か柏原。
何でお前が来んだよっ。
俺が待ってんのは、お前じゃねぇよ。
あー、心菜と話出来ねーだろうが。
「心ちゃん焦ってたな。
さて、旦那様。どうフォローする?」
そう嫌な笑みを浮かべながらトイレに入って行く柏原。
コイツ~、全部気づいててワザとトイレまで追いかけて来たなっ!
んっとに性格の悪い男だな。
はぁ。柏原の背中を見送って前を向いたと同時に
「陽呂~~~」
小走りでこちらに向かって来る、心菜は今にも泣きそうな顔。
「見事な嘘をついちゃいましたね?」
苦笑いの俺に、
「だって……。あたしが家事を全部、陽呂にさせてるんだろう。って言うんだもん」
そう俯いて、頬を膨らませた。

