立ち上がって再びノブに手をかけた。
ドアが開けられると思ってなかったんだろう。
簡単に開いたドア。
目線を下に向けると泣きながら、驚いた顔で俺を見上げていた。
「ほら、やっぱり泣いてる」
そう言いながら、ゆっくりと心菜の前にしゃがみ込んだ。
「……ひっ、人の部屋に勝手に入らないでよっ!」
真っ赤な鼻の泣き顔には、似合わない強がり。
俺に背を向けるように座り直した、心菜の小さな背中に声をかけようとしらた家の電話が鳴り響いた。
――プルルルルル……プルルルルル……
「何で泣いてるんですか?」
「……電話鳴ってる!」
――プルルルルル……プルルルルル……
電話なんて後でいいから。
こっち向けよ。
理由を話せよ。
――プルルルルル……プルルルルル……
「後でいいですよ。それより…」
「出てっ!」
電話なんかで中断出来るかっつーの。
――プルルルルル……プルルルルル……
鳴り止まない電話に、心菜が手を伸ばした。
ピッと子機が小さな音を立てる。
なんだよ、電話なんて後でいいだろーが。
「え? うん。居るけど」
子機を握り締めながら、振り返り俺と目を合わせる。
……俺に電話か?
小さく首を傾げると、俯き加減に頷き子機を差し出した。

