「ちょっ! 勝手に入って来ないでっ」
あぁ?
部屋には鍵は、ない。
だから開ない訳が、ない。
心菜が、ドアを押さえてるだけだ。
ちょっと力を入れれば開くんだろうけど。
「……心菜さんが嫌なら入らないでおきますね」
ドアを引く力を緩めた。
「……え」
中から微かに声が聞こえた。
その「……え」は、どういう意味?
ドアを開けるのも止め、部屋に戻るのも止めた俺はドアに、もたれるようにして座った。
「ここで良いんで、話出来ませんか?」
やっぱり応答なし……か。
「俺、何かしました? もし何かしてたら謝るんで理由を…」
「別に、謝って欲しい訳じゃないっ!」
同じ位置から聞こえる声。
心菜も座ってんかな?
「じゃあ、どうしたら良いんですか?」
「別に……どうもしなくていいっ」
「……言わなきゃわかりませんよ?」
「……っ」
えっ。
もしかして、泣いてる?
「泣いて、ますか?」
「泣いて……なっい」
はい、泣いてるな。
悪いな、心菜。
泣いてんなら無理矢理にでもドア、開けるから。

