LOVE PRINCESS(陽呂&心菜)




――バレンタイン当日



今日は登校を車にした。


どうしてもチョコを貰う陽呂の姿を見たくなくて。

それだけの理由で陽呂を振り回すんだ。

本当に我儘な私。


学校の少し手前で降ろして貰い、先々と歩く。

後ろから、私を呼び止める陽呂の声がするけど聞こえないふりをする。


だって……


陽呂を呼び止める女の子の声も聞こえるから。

振り返れば、チョコを渡す女の子の姿を嫌でも見なきゃいけなくなる。


そんなの……見たくない。


急いで教室へと入った私に飛び込んでくるのは、甘い甘い空間。


一言で言えば……なんだこりゃ。

頬を赤らめた女の子と、何気にソワソワしてる男の子。

もうチョコを渡してる子すら居て、それはもう甘い甘い空間が出来ていた。


その中に1人……

誰も寄せ付けないオーラを出し、机に寝そべってる女の子が1人。


愛未だ。


愛未の席の前に行っても反応すらない。

首を傾げながら、


「愛未? おはよう」


と声をかけた途端、ガバッと起き上がり、


「心ちゃん! 遅いよ〜」


と涙目。

遅いって言われても……。
何の約束もしてないじゃないの。


「どうしたの?」

「それがさぁ、言ってた勇二君なんだけどね!」

「勇二君?」


誰だ、それ?