教室に入ると、愛未が走って来た。
「ねー、心ちゃん」
「何?」
机に鞄を置き顔を愛未に向けるとキラキラ輝いた瞳。
こんな目をしてる時の愛未は、
絶対変なんだよね。
「明日のバレンタインが勝負だよね!」
「愛未、好きな人いたの?」
「よく聞いてくれたじゃない!
近所のレンタルショップの店員さんの勇二君、19歳の大学生!」
「……誰それ」
そのまま話し続ける愛未を放置して窓の外を見ると、陽呂がまた違う子に呼び止められてるのが目に入った。
陽呂は、誰かと付き合ってしまうんじゃないか……。
それはないだろうと思ってても、不安で仕方がないよ。
こんな傷だけで一生、私のそばに居てくれるわけがないんだから。
陽呂が私を“好き”になってくれる事なんて絶対ない。
「……って、心ちゃーん!?
私の話聞いてる?」
愛未が背伸びをして、私の耳を引っ張った。
そのせいで少し体が傾いた。
「えー? 聞いてないよ。てか、痛いってば」
「聞いてない。って!
ちゃんと聞いてよー。
……あ〜、なるほどねぇ〜」
膨れた愛未が私の見ていた方を目で追い、ニヤッといやらしい笑みを零した。
「なるほどねぇ。って何よ?」
少し赤くなった頬を隠すように横を向いた。
「心配しなくても大丈夫よ?
陽呂君、本命チョコは受け取らない主義らしいからねっ♪」
にっこりと笑う愛未に、うっ。と詰まってしまった。

