「ねぇ、陽呂君!」
「えっ? あぁ、何?」
その子達の方へと顔を向けたのを見て、また歩き出した。
あの子達はいいな。
陽呂に普通に話してもらえる。
本当の陽呂を見れるんだから。
「明日のバレンタイン、チョコ受け取ってくれる?」
ドキンッ、と大きく鳴る心臓。
大きな声で言うから少し離れた私の耳にまで、しっかりと届いてしまった。
「あー、俺…」
「わかってるって! 本気チョコじゃないからねっ」
その後は聞こえなくなってしまった。
下駄箱でチラッと見ると、陽呂は凄く楽しそうに笑ってて。
それを見てまた、胸が痛くなってしまったんだ。
あの女の子達みたいに、私も可愛く笑えたら良いのに。
私には絶対無理だ。
バレンタイン前になると、毎年毎年すっごく悩んで、雑誌とか調べたりして。
やっとの思いで決めたプレゼントとチョコを、素っ気なく渡す時でさえ、ドキドキしてしまって。
本当に馬鹿。

