そのまま歩く私に、陽呂は何も言わない。 車が通り過ぎる度に、水溜まりを踏み、飛び散る泥水。 「せめて壁側を歩いてくれませんか?」 道路側になる度に壁側へと移動させられる。 その時に一瞬触れる肩が熱くて。 同じ事を繰り返した3度目。 「……はぁ」 小さく溜息をついた陽呂が突然私の手を握った。 「えっ?」 「濡れますから……」 見上げた陽呂は、あたしに顔を背けて呟いた。 だけど耳が赤くて。 それが何だか嬉しくて……その手を振り払わなかったんだ。