予定日の8月1日を1週間過ぎた8月8日。


安産祈願のお守りを沢山持って、手を握るしか出来なかった俺の前で頑張る心菜。


女って凄い。
母親って凄い。


ただ、それだけだった。


すげぇ元気な産声をあげ、誕生した俺達の娘。

3347グラムとデカイらしいが、小さい娘。

俺の指を強い力で握り返してくれる娘。


「心菜……頑張ったなぁ」


そっと声をかけると、力なく笑う。

握り合った手が震えているのは、心菜が震えているせいなのか。

それとも俺が震えているせいのなのか。


それはわからないけど。


今までに感じた事のない想いが胸の奥でうずうずとした瞬間だった。


産湯から戻って来た娘を見て、


「綺麗になったね」


そう微笑んだ心菜は、凄く優しい表情で。


俺も嬉しくなったんだ。



誰からも愛される、プリンセスになって欲しいと決めた名前。


愛姫(マキ)


この小さな手は、いつか誰かの手を掴み生きて行くんだろうな。

それまでは俺達の小さな小さなプリンセスで居て欲しい。


その日まで俺がお前達を守らせてな。

そして、例え別の誰かに守られるその時が来ても。

俺達はずっとお前の味方だからな、愛姫。




-END-