転校の話を聞いてから、気を紛らわすために
蒼空はお気に入りの山の上のテラスでぼんやりそこからの眺めを見ていた。
見えるのは大きな青空と俺が住んでいる静夏町。
時間が立つにつれて日もともに落ちてゆく。
ゆっくりと町の色、空の色を変えてゆく。
そんな光景を蒼空は写真に納めたくて仕方がなかった。
どうしてなのかは自分でも分からない。
ただ撮りたかったのだ。
カメラのピントを合わせ、撮ろうとしていると
「ねぇ、君、空好きなの?」
優しい声が隣から聞こえた。
「えっ」
聞こえた声の先には白いワンピースに包まれた一人の華麗な女性が立っていた。
本当にキレイだった。
歳は俺とおなじぐらいだろうか?
「写真を撮るってことは空、好きなんだよね?」
女性が蒼空の隣に寄ってくる。
「えーと、まぁ好きですよ。もう何年も空を撮り続けますから」
蒼空は少し照れながら答える。
「わぁ、すごい!よかったら見せてくれませんか?」
目をキラキラさせながら、さらに距離を縮めてくる。
「いいですけど…、そんな大層な物じゃないですよ。
あと、距離が…」
「あっ!スイマセン。はしたなかったですね」
俺はむしろ幸せでした!
「いえいえ、大丈夫ですよ。はい、これ俺が撮った
写真です」
蒼空は女性にカメラを渡す。
「えとえと、これ、使い方……教えてくれませんか?」
「え?あっ、はい。ここをこうしてですね、」
でも機械に弱いなんて、お嬢様?
「ありがとうございます!えと、こうして、
……わぁー、キレイですね」
「いえいえ、俺なんてまだまだですよ」
俺は視線を女性から外す。
「そんなことないですよ!スッゴくキレイに撮れてます!渡も空、好きなんです。よかったらあなたの写真見せに来てくれませんか?私、ここにいることが多いいので。
私、紫之月 華菜(しのづき かな)っていいます。」
そう言うと、それではまた、と紫之月さんは帰っていった。



