私の隣の少年は毎日、ベランダで空を見ていた。


私は少年が何をしているのか気になった。


「…何してるの?」
初めて自分から発した言葉だった。

一度、少年は私の方を見た。

「空を見てるんだよ」


「そら?」
分からなかった。

「ん?空を知らないのか?」
ベランダ越しに話した。

「うん」


「こんなキレイなものを知らないなんて…もったいないなぁ~。んじゃ教えてあげるよ」

「空はな、俺たちを見守ってるんだ。優しく包み込んでくれている。いっつも違う形を見せてくれる。人みたいだろ?」

「……よく、分かんない…」


「そっか、分かるようになったらお前も空が好きになるさ」


「蒼空ーご飯出来たわよー」
少年のお母さんの声だ。

少年は、またな。
と下へと降りていった。